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「最初、その女がマナかと思ってたんだよ、俺はね」
「……? どういうこと」
「ダイと一緒に、
エイユウの仕事上がり狙って、
会社までよくあいつを迎えに
行ってたんだよ。そしたら、
5割くらいの確率でエイユウ、
その女といて。仲よさそうにしてたり、
言い争ったりしてたから、
てっきり彼女なんだって。
ある時ダイに違うって
教えてもらったんだけどさ」
「……そんなによく一緒にいたの?」
「まあ、退学になった経緯が経緯だし、色々あったんだろ」
ゆったりと煙を吐き出しながら、その女のことはそれ以上よく知らない、とジンは言った。
「……彼女かと思われるくらいには、一緒にいたんだ……」
「マナ、それは……」
ジンは何か言いかけて、でも、彼はしばらく考えるそぶりを見せただけで、続きはなかった。
「何? 何なの?」
「……俺が言っていいのかどうか判らないから。悪いけど」
「そこまで言ったら、言ってよ。何だか、気持ち悪いよ」
ジンは短くなった煙草を灰皿に投げ入れると、そのまま立ち上がる。
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