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「昨夜のことも、それも含めて、エイユウと話した方がいいよ」
「けど、ジンは知ってるんでしょ?」
「それは、俺がたまたま知ることのできる立場にいたからだし。未だにマナの知らないことがあるっていうのは、エイユウがそういう判断をしたからってことだろ。いくら俺がおせっかいでも、言っていいことと悪いことの区別くらい、つくからね」
ジンの瞳が、真っすぐあたしに向けられた。
その瞳が、どれだけあたしが食い下がっても話すつもりはない、と言っている。
悔し紛れに、俯きながらぼやいた。
「……何かあるってことだけちらつかせるだけちらつかせて、肝心なことは話さないのって、ずるくない?」
「何も知らずに聞くのと、何かあるって判って聞くのとは違う、そう思っただけだよ」
そういうのが優しさだとは別に思ってないけど、とジンは付け加える。
消化不良の気持ちを抱えたまま、あたしとジンは並んで歩いた。
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