205人が本棚に入れています
本棚に追加
「そうだけど、誰?」
ごめんなさい、の理由がよく判らないけど、声から伝わる緊張で、何となくあたしが優位にいることを悟った。
『あの……あたし、同じ高校に通ってた水沢』
水沢……愛理(エリ)。
それを聞いただけで携帯を道端に投げ捨てたくなるあたしは、気にし過ぎなんだろうか。
かたかたと、指先が震える。
だって、何なの?
水沢エリがあたしの携帯にかけてくるなんて、何事なの?
っていうか、どうしてあたしの番号なんか知ってるの?
昨夜ヒデオが妙な嘘をついて姿を消してたことと、今水沢エリがあたしの携帯に電話を寄こすことと、無関係な気が全然しない。
むしろ疑惑は深まるばかりじゃないか。
「……その水沢さんが、あたしに何の用なの?」
尖った声が出た。
そうしようと思って口を開いたら、思った以上に冷たい声が出て、あたしは一瞬心の中でガッツポーズをする。
.
最初のコメントを投稿しよう!