7.滑落

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   ああ、恥ずかしい……。  吐きながらついでにぼろぼろ泣き出したあたしの目元を、西門さんは「はいはい」と笑いながら柔らかいハンカチで拭ってくれる。  かっこいいスーツをばっちり着こなしているような人だから、ハンカチなんかはシルクなんじゃないかって思ったけど、意外にも普通のコットンのハンカチだった。  何というか、そんなとこまでかっこいいと思ってしまった。  それどころじゃないけどさ。 「大丈夫? 服、汚れなかった?」  はっと気付くと、西門さんは背中を撫でてくれながら、あたしの長い髪をちゃんとひとまとめにして握ってくれている。  その仕草に、こういう状況に慣れているんだなぁ……なんて思いながら、洗面台で口を濯いだ。  昨夜からかきっぱなしの恥は、この際しばらく忘れることにしよう。 .
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