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ようやく吐き気の治まったあたしを見ながら、西門さんはクスクスと笑った。
「……何で、笑うんですか」
「いや、昨夜ので懲りた筈なのにまたそんな飲み方してるから」
「……ちっとも学べない馬鹿、ってことですよね」
判ってますよ、と口の中で呟きながら溜め息をついたあたしに向かって、西門さんは「いいや」とかぶりを振る。
「判ってても、やっちゃう気持ちは判るからだよ。俺にはもうそんな飲み方、できないけど」
タバコが吸いたいから俺の部屋で話そう、と言う西門さんの後に続いて、あたしも化粧室を出た。
その廊下に、ここで働く女性達の残り香か、香水の匂いが充満している。
ひとつひとつならいい匂いなのだろうけど、混ざり合って何とも言えない甘さだけが鼻についた。
「ほれ、こっちだよ」
顔をしかめることもせず、無表情で付いて来たあたしを軽く一瞥すると、西門さんは小さく笑った。
その意味がよく判らなくて、あたしは首を傾げる。
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