7.滑落

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   西門さんはしばらく黙った後、あたしに水を入れてくれながら、ぽつりと呟いた。 「マナちゃん、そんでその彼氏……エイユウくんと別れるの?」  ジンがヒデオを「エイユウ」と呼んでいることを気に入ったらしい西門さんは、まるで知り合いのことみたいにそう言った。  はたと押し黙ったあたしを見て、西門さんはクッ、と小さく笑う。 「まだそこまで考えてないか。結論が出るくらいなら大人しく家にいただろうし」  はなからそうと判って訊いたみたいだった。  確かに、不愉快と痛いのだけがたくさんあって、今日は自分の意思っていうのがまったく見えてこない。  ヒデオに必要とされてることくらいは、今だって判る。  彼はあたしを手放す気がないんだろうってことも。  でもそれは今だけの話で、本気で好きだの何だの言い交わしたところで、それに飽きたりしたらどうなるか判らない。  それは浮気の気配の欠片もない普通の恋愛だってそうだけど、ヒデオみたいに周りに固められているのなら、あたしとしてる恋愛って本気の遊び、そう呼ぶにふさわしい。 .
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