7.滑落

18/19
205人が本棚に入れています
本棚に追加
/39ページ
   ヒデオと結婚したいなんて考えたことなかったし、まだそんなことを意識するような歳じゃないんだけど、いざこういうことになると悲しくて痛くて仕方ない。 「……時間の無駄なのかなって、どこかでそんなこと考えてるから、悲しいのかな。腹が立つのかな」  西門さんと話しているうちに消えた敬語。  それを咎めることもなく黙って聞いていた西門さんは、煙草をくわえる。  煙草を吸われるのは別に気にならないとさっき言っておいたから、西門さんは吸ってもいいかという確認をもうしてこない。  ひとつずつ動いて、勝手に嵌まっていくパズルのピースに、さっきから気付いてはいるけれど。  話が済んだら、丁寧にお礼を言って大人しく家に帰ればいいってことくらい、判ってるんだけど。  別に下心なんてないし、望んでいるわけでもなくって、それは多分西門さんも同じなんだろうとは思うんだけど。 .
/39ページ

最初のコメントを投稿しよう!