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それを聞いて、あたしの思考回路は痛みの合間をぬってようやく動き始める。
痛むこめかみを押さえながらゆっくりと起き上がると、奥の部屋から物音が聞こえた。
「あ、家の人、奥で寝てるって言ってたから、そろそろ起きたのかも……」
ジンが眼鏡をかけながら、奥の部屋のドアを指差す。
見ると、ちょうど絶妙なタイミングでそのドアが開いた。
ヒデオに負けず劣らず長身のその人は、ひと目で水商売の人間だと判る雰囲気をまとっている。
その人は、起き上がっているあたし達に気付くと、ニコッとほほ笑んだ。
ちょっと怠そうな色気があって、でも笑うと何だか子どもみたいだな、と思った。
「具合、どう?」
話すだけで、女が落ちそうな声だな、とも。
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