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シルクみたいな光沢のある濃いグレーの紙に、箔押し印刷、っていうのかな? 銀色の行書体で西門さんの名前が書かれた名刺は、サラリーマンの持ってるそれより何倍も高そうだ。
お店のロゴなんかは、七色に輝いてるし。
こんなの、ただの学生であるあたし達がもらうのも勿体ない気がする。
どうせ二度と会うこともないだろう、と思いつつ簡単に捨てられるようなものではない気がして、あたしはそれを財布にしまった。
何でこんなによくしてくれるのかと訊いたら、溺愛している姪っこと同じ年頃の子を放っておけない、と笑っていたっけ。
若そうに見えるのに、随分大きな姪御さんがいるんですね、とジンが言うと、西門さんは「姉と年が離れている」と話してくれた。
見た目はとてもクールな感じがするのに、話をしていると情の厚い人なのだと判った。
水商売の人って、もっとこう、虎視耽々と人の隙を狙っているような人ばかりだと思ってたんだけど、西門さんに悪い考えっていうのはあんまりなさそうで、むしろその人の良さみたいなものでやっていっているようだった。
世の中、色々だな。
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