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「ヒデオ……」
けど。
「ん……?」
どうしてだか、ヒデオの瞳がいつもより優しかった。
その甘ったるい空気がやっぱりどうにも気持ちよくて、言いたくないな、と思ったけど。
黙ったままでいたら、あたしは──あたし達は、また今日みたいなことを繰り返す。
あたしはいやだよ、そんなの。
「話、済んだら今日は帰ってくれる?」
「……あ、うん。心配しなくても、そのつもりだから」
下にいるあたしの親達を気遣ってか、さっきからヒデオの声とか動作が小さい。
意外と気を遣うところとか、昔から変わってない。
「あのね、ヒデオ。ヒデオが働いてるのって、お父さんの会社なんだよね?」
「何、今さら。そうだけど」
好きだな、やっぱり。
どうしようもないくらい。
だから言うよ、言いたいこと。ちゃんと、全部。
「水沢エリが、ずっとヒデオのお父さんの会社にいるって、ホントなの?」
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