9.決壊

8/13
前へ
/28ページ
次へ
   ヒデオがあたしの目から溢れる涙を指先で拭う。 「……すいません、先にちょっと、娘さんとお話させていただけませんか? マナミさん、俺に言いたいことがあるみたいなんで」  きっぱり臆することなく言ったヒデオの声に、緊張が混じっていた。  今度はお母さんの方が頷いたのが判った。 「あ、じゃあ娘の部屋でかまわない? 私達、ここにいるから」 「すいません、なるべくすぐ済ませます」  ヒデオはぺこりと頭を下げると、しゃくり上げるあたしを立たせて、リビングを出る。 「お前の部屋、どこ」  静かに訊いて来るヒデオの声に労わりを感じる。  あたしは泣くのを何とかこらえようとしながら、2階を指差した。 「奥……」 「判った。無理に泣きやまなくてもいいから、掴まってろ」 .
/28ページ

最初のコメントを投稿しよう!

181人が本棚に入れています
本棚に追加