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ヒデオがあたしの目から溢れる涙を指先で拭う。
「……すいません、先にちょっと、娘さんとお話させていただけませんか? マナミさん、俺に言いたいことがあるみたいなんで」
きっぱり臆することなく言ったヒデオの声に、緊張が混じっていた。
今度はお母さんの方が頷いたのが判った。
「あ、じゃあ娘の部屋でかまわない? 私達、ここにいるから」
「すいません、なるべくすぐ済ませます」
ヒデオはぺこりと頭を下げると、しゃくり上げるあたしを立たせて、リビングを出る。
「お前の部屋、どこ」
静かに訊いて来るヒデオの声に労わりを感じる。
あたしは泣くのを何とかこらえようとしながら、2階を指差した。
「奥……」
「判った。無理に泣きやまなくてもいいから、掴まってろ」
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