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さすがのあたしも、今の発言の何が悪かったかくらいは自分でも判った。
あたしを罵る言葉が降って来るんだと思って、何故か腰に力が入る。
そうしたら、予想とは違うことが起きた。
「──っ」
口を開かされて、罵り言葉ではなくヒデオの口唇が落ちて来た。
そのまま、熱い舌が入って来る。
いつもの煙草の味がして、あたしはほっとしてしまった。
ヒデオのキスは、まるでそれしか知らないんじゃないかって思うくらい、いつも口唇と口唇が触れると同時に舌が滑り込んで来る。
でも不思議と、がっついてるとか無粋だとかは思わなくて、これがこの人のやり方なんだ、と感じてしまう。
なかなか言葉や態度にしてくれないヒデオに求められているのがやっと判る瞬間だから、嬉しいだけなのかもしれないけど。
このキスに酔っていられるなら、あたしは多分今日あったことをなかったことにしてしまえる。
水沢エリからの電話のことも、西門さんとのことも。
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