10.自嘲

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   黙ったまま頷くと、ヒデオは少し落ち込んだ声ぼそぼそと呟く。 「……言い訳する気はないけど、  一昨日の夜、ちょっと携帯が  行方不明になったんだ。  何時間かの話だけど。  飲み屋の座敷の隅っこに落ちてるのを  先輩が見つけてくれて、ほっとした。  多分だけど、水沢がパクッてたんだと思う」 「飲みに行ってたのは、ホントだったんだ?」 「当たり前だろ」 「じゃあ、何でジンにはあたしといるだなんて嘘ついたわけ?」  信号が、青になる。ヒデオはまた大きく息をついて、車を発進させた。 「断れない飲みだったし……会社のだから、水沢、いるし。俺の気持ち的に、ジンには言いにくかったんだよ」 「それって、ジンがあたしのこと、特別な感じで見てるから?」  運転しながら、ヒデオは一瞬ギクリとした目をあたしに向けた。  けどすぐにまた運転に集中する。 「気付いてるなら、何でアイツと2人で飲みに行ったりするわけ」 「気付いてなんかないよ。さっき青柳に会って、あんまりジンのこと振り回すなって、怒られた」 .
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