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黙ったまま頷くと、ヒデオは少し落ち込んだ声ぼそぼそと呟く。
「……言い訳する気はないけど、
一昨日の夜、ちょっと携帯が
行方不明になったんだ。
何時間かの話だけど。
飲み屋の座敷の隅っこに落ちてるのを
先輩が見つけてくれて、ほっとした。
多分だけど、水沢がパクッてたんだと思う」
「飲みに行ってたのは、ホントだったんだ?」
「当たり前だろ」
「じゃあ、何でジンにはあたしといるだなんて嘘ついたわけ?」
信号が、青になる。ヒデオはまた大きく息をついて、車を発進させた。
「断れない飲みだったし……会社のだから、水沢、いるし。俺の気持ち的に、ジンには言いにくかったんだよ」
「それって、ジンがあたしのこと、特別な感じで見てるから?」
運転しながら、ヒデオは一瞬ギクリとした目をあたしに向けた。
けどすぐにまた運転に集中する。
「気付いてるなら、何でアイツと2人で飲みに行ったりするわけ」
「気付いてなんかないよ。さっき青柳に会って、あんまりジンのこと振り回すなって、怒られた」
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