10.自嘲

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  「何で、いつもそうなんだよ。お前、肝心なこと全然言わない」 「言ったら、どうにかなったの」 「何?」 「言ったらヒデオ、仕事変わってくれたりするの? 水沢エリのこと、辞めさせたりしてくれるの?」  そういう問題じゃないだろ、とヒデオは顔をしかめる。  すでに薄暗くなってる中でも、不機嫌な彼の表情はよく判った。  判るんだ。  ヒデオの気持ちも言いたいことも、何となく判る。  けど、  いつか心に刺さったままのトゲが、  なかなか抜けない。  口唇を噛み、黙ってヒデオの横顔を見つめる。  カーブで減速しながらヒデオはチラリ、とあたしの顔を見た。  ふいっと視線をそらしたかと思うと、ヒデオはため息をつく。 「……んな目で、見るな」  苦しそうな声だった。 .
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