10.自嘲

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   西門さんに比べたら、さすがにテクニックの点はヒデオでは敵わないのかも知れない。  ヒデオにいいようにされながら、昨夜の男とのことを思い出して比べることを、別に悪いとは思わなかった。  だって、口唇の熱さ、喉の奥まで来そうな勢いで差し込まれる舌、トシの割に渋すぎるパーラメントの味と香り、この組み合わせは絶対他にはないこと、あたしは知っている。  そしてヒデオのキスがこうだから、あたしは彼とのキスが一番好きで。  そんなの別に理由になってないって、頭ではそう思うんだけど。  もし、わけなくヒデオを取り上げられるようなことがあるんだとして、あたしはそれをいやだと泣いて、うざいくらい駄々をこねてしまうと思う。  好きって、そういうものだと思った。  すっきりしないことは、ヤマほどある。  たぶん、ヒデオもあたしに対してそういう部分があるんだってことも、何となく判ってる。 .
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