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「そろそろ、何か連絡あるかなって思ってました」
地元の人間にはあまり会わない、例の繁華街の駅を降りたところにあるカフェ。
ブレザーをカバンの中に隠して、パーカーを羽織ったヒトシくんは、とても高校生には見えなかった。
付き合い始めたころの可愛らしい面影なんて、どこにもない。
会う度思うけど、この男、どんどん大人びてってる気がする……。
どう切り出したものかと少し考えていると、ヒトシくんはポケットから煙草を取り出した。そして、止める間もなく火を点けて、吸い始める。
「……高校生でしょ」
「でも、見えないでしょ」
見つかったらどうするの、と小声で訊くと、ヒトシくんはニコッと笑った。
「大丈夫、二十歳になったらやめます」
「……言ってること逆だし」
「だって、煙草の香りもしない男、マナミさん、いやでしょう?」
ぐ、と息が詰まる。
ヒトシくんとおかしなことになるつもりは、まったくない。
だけど、危なっかしい安定剤のこの男から煙草の匂いが掠めるのを想像して、悪くないと思ってしまった自分が嫌だ。
ヒトシくんは天井を軽く仰ぐと、ふっと煙を吐き出した。
「ヒデオくんが退学した原因になった女のこと、ですよね?」
あたしが何か言う前に、ヒトシくんはちらり、とこっちを見る。
やっぱり、知ってた。
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