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「俺、謝らないよ」
まだ夜の気配を残す朝の静かな空気の中、歩きながらジンは口を開いた。
え、と思わず立ち止まると、ジンも立ち止まる。
ゆっくりと振り返るジン。
その瞳が、深い悲しみに満ちていた。
さすがに、胸を刺されたみたいにツキンと痛む。
「マナのこと、ラブホに連れ込んだのは──最初はホントに、困って仕方なかったからだったけど。キスしようとしたことは……仕方ないだろ、俺も男だし」
「……別に、ジンのせいにしようなんて思ってないけど」
「『俺が』確認しておきたいんだよ。
ラブホとキスのことは、
完全に俺のせい。けど、そこから
先は──どっちのせいでも、ないだろ。
マナは拒まなかったし、
俺もマナの上からどかなかった」
「……ジン、真面目だね。そんなに50:50にしておきたいわけ?」
「……うるさいよ」
また、知らなかったジンの顔が見えた。
散々ジンに苛められたあたしの下半身は、いい加減眠らせてくれとばかりに無反応だけど。
って、男じゃあるまいし、いちいち反応する必要もないんだけど……あたし、ホント、バカ。
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