12.酔狂

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  「……いないよ」 「はい、嘘ですねー。その反応は、誰かいますねー」  軽く酔って舌っ足らずになっているあたしがきゃはは、と笑うと、西門さんは肩をすくめた。 「どっちでもいいだろ、そんなこと」 「ううん。西門さんってひとりが似合わないタイプだと思うんだよね。だから、誰かいるなら早くゲットしようよ」 「ガキが、プロ相手に判ったようなこと言うんじゃない」  苦笑しながら言う西門さんは、あたしの言葉を完全に否定はしなかった。  この間だって、あたしが気絶したのをいいことにやめた感じだった。  人間って、キスができる相手なら、そのまま最後までしてしまえるものだと思う。  自暴自棄になった女ほど、カモにされやすいものはないと思うんだ。  普通の健康な男なら、いいことなんてないって判ってても、据え膳を頂いてしまうものだろう。  けど、西門さんが最後のそれを避けたというのは、あたしとシちゃうことによって、誰か罪悪感を覚えてしまう人がいるんじゃないかって、短絡的にそう思っただけなんだけどさ。  もちろん、西門さんがこれまで散々据え膳に痛い目に遭わされてきて、とっくにこりごりなんだって可能性もあるにはあるんだけど。  単にあたしが、誰か好きな人がいるから他の女とスるのは避ける、っていう理由の方が好みなだけだ。 .
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