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「……いないよ」
「はい、嘘ですねー。その反応は、誰かいますねー」
軽く酔って舌っ足らずになっているあたしがきゃはは、と笑うと、西門さんは肩をすくめた。
「どっちでもいいだろ、そんなこと」
「ううん。西門さんってひとりが似合わないタイプだと思うんだよね。だから、誰かいるなら早くゲットしようよ」
「ガキが、プロ相手に判ったようなこと言うんじゃない」
苦笑しながら言う西門さんは、あたしの言葉を完全に否定はしなかった。
この間だって、あたしが気絶したのをいいことにやめた感じだった。
人間って、キスができる相手なら、そのまま最後までしてしまえるものだと思う。
自暴自棄になった女ほど、カモにされやすいものはないと思うんだ。
普通の健康な男なら、いいことなんてないって判ってても、据え膳を頂いてしまうものだろう。
けど、西門さんが最後のそれを避けたというのは、あたしとシちゃうことによって、誰か罪悪感を覚えてしまう人がいるんじゃないかって、短絡的にそう思っただけなんだけどさ。
もちろん、西門さんがこれまで散々据え膳に痛い目に遭わされてきて、とっくにこりごりなんだって可能性もあるにはあるんだけど。
単にあたしが、誰か好きな人がいるから他の女とスるのは避ける、っていう理由の方が好みなだけだ。
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