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「……あ」
買い物を済ませて、信号待ちをしていたときのことだった。
あたしと彼は、偶然隣に居合わせた。
顔を見た瞬間、同時に声を出してしまった。
──ジン。
ヒデオとあたしが別れたのを目の前で見届けさせられたジンは、それでも無言で家まで送ってくれた。
それが、最後に会った日だ。
そのまま交差点でそそくさとサヨナラしてしまえるほど、ジンもあたしも薄情じゃなかったらしい。
どうしているかは、正直気になっていたから。
それでも、カフェなんかに入るほど落ち着きたくもなくて、ジンが買ってくれたあったかいココア片手に、バス停のベンチに腰を下ろした。
「……元気してた?」
口火を切ったのは、ジンだった。
あたしはうん……と小さく頷くと、冷めないうちに開けたココアを少しだけ啜る。
「真面目に学校行ったりしてるよ。年が明けたら、免許でも取りに行こうかなって思ってるんだけど」
「年始はけっこう混むよ」
「らしいね。でも、春休みまで待ってたら行く気なくしそうだから」
そっか、と笑って、ジンは煙草を取り出した。
くわえて火を点ける仕種を見ながら、あたしは手持ち無沙汰で、缶をゆっくりと回す。
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