15.反転

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  「ちゃんと、マナ本人に言ったことなかったけど」  耳の後ろで、ジンの少しかすれた低い声が響いた。  ……あの夜、やけっぱちだったからってジンを受け入れたのは、このやたら甘くていい声のせいだったことを思い出した。  本人が自覚しているかどうかは判らないけど、ジンの声と話し方は女の子のガードを緩める力があると思う。  この声に、あたしはいつも安心していた。  もちろん、彼自身に惹かれなかったわけじゃないけど、ただ、恋と呼ぶには何か足りなかったんだ。  恋だったなら打算とか抜きにこの腕を選んで、ヒデオをあっさり裏切れたんだろうけど。  別にそういうことを狙ったわけじゃなかったし、そういうことをしたかったわけじゃない。  ジンを、傷付けたかったわけでも。 「……マナのこと、好きだ。  だからあのとき、  マナのしたいようにした。  それは、ホント」  あたしはジンに抱きしめられたまま、クスクスと笑った。 「……何だよ」 「じゃあ、あたしがあのとき頑として拒んでたら、何もなかった?」 「うん」  ジンは、やたらきっぱり頷いた。 .
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