15.反転

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  「マナのこと、好きだけど……ハラ立ってたけど、俺、エイユウのことも好きだし」 「……じゃあ今度はジンがヒデオと付き合うの?」 「バカ、真面目に聞けって」 「ごめん」  ジンはあたしを抱きしめる力を緩めると、少し顔を傾けて覗き込んできた。 「だから、好きな女とやれてラッキー、なんて今でも思ってないんだ。大きいのは、エイユウへの罪悪感」 「……それこそ、妬けちゃうんですけど」  え、とジンは眉を寄せた。  茶化してるわけじゃないんだけど。 「ヒデオとジンは、気が済むまで殴り合いしたんでしょ。あたしは、そうはいかないもん」  ジンはプッ、と吹き出した。 「そりゃ、そうだ」  傾き始めた陽が風の冷たさを隠せなくなってきて、少し寒い。 「……エイユウのところ、戻りたいんだ?」  ストレートにそう訊いてくるジンの瞳が、優しい。  一瞬、またジンにどうにかしてもらえないだろうか、なんて甘えた考えが頭に過ぎる。  だけど、それはあたしが一番しちゃいけないことだし、それに、ヒデオのもとへなんて戻れるはずがなかった。  喉元まで上がってきた苦いものを飲み下して、あたしはかぶりを振る。 .
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