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「そんなこと、できっこない」
「エイユウは、マナが嫌ならやめようって言ったんだよ。マナさえその気なら……」
「そういう問題じゃないの、判るでしょ」
確かに、こじれたのはヒデオが大事なことを何一つ話してくれなかったせいだ。
だけど、ホントはそうじゃない。
あたしがしなきゃいけなかったことは、不安に身を任せてフラフラすることじゃなく、ヒデオのことが好き、っていう自分の気持ちを貫くことだ。
相手を疑うとか相手がどうとか、そういう問題じゃない。
自分の気持ちをしっかり持つだけなら、ヒデオがどんな振る舞いをしても、関係なかったはずだ。
自分の弱さやずるさをヒデオや周りにべったりなすり付けて、あたしは一番肝心な自分から、逃げた。
そんなあたしが、ヒデオの優しさに甘えて彼にすり寄ったところで、いつかまた同じことを繰り返す。
「……あたしみたいな女は、一度ひとりになった方がいいんだよ。しっかりしなきゃ」
「……ふうん。諦めるの、惜しくなるようなこと、言うようになったじゃん」
「え」
「冗談だよ」
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