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「そのとき、思い出せるように。
……エイユウね、言ったんだ。
『俺は手放す気なんてなかったけど、
そばで俺が生きてるだけで、
マナミを迷わせるし、傷付ける。
だから、別れるしかなかった』って」
「……」
「マナ、その意味、判る?」
一瞬で泣きそうになったから、口唇を噛みしめて我慢する。
追い討ちをかけるように、ジンがその続きを口にした。
「エイユウはね、自分の気持ちより、マナの気持ちを優先したってこと──あのデカイ何様男がそうやってまた、水沢エリに頭を下げたんだよ。自分も一番大事なものをなくしたんだからもう、許してくれって」
ジンはあたしの手のココアの缶を取って、それもゴミ箱に入れてくれる。
ガシャン、と乾いた音が響いた。
「その後、水沢エリは自分の足で、エイユウのオヤジさんとこ行ったんだって。色々あるから会社をやめることは出来ないけど、特別扱いをやめて、エイユウと違う部署に行かせてくれって言いに」
「……そんなこと言われたって……」
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