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「呆れてものが言えません」
ものすごく困った様子で、ヒトシくんはため息をついた。全身で。
当然かなと思ったと同時に、投げやりな気持ちになる。
マドカに今度こそヒデオと別れた、と言うと、案の定問い詰められた。
ジンと寝たんだ、って正直に言ったら、マドカにまで頬を打たれた。
自業自得なんだけど、こたえてしまった。
だからというわけではないけど、あたしはヒトシくんを呼び出して、この数日で起きたことを話したのだった。
「まったく……あなたって人は、ホントにもう……」
わざとらしく目元を覆って、ヒトシくんはかぶりを振る。
指の間からちら、とヒトシくんの目が見えた。
……その瞳は、やっぱり怒ってる。
そして、ちょっとだけ悲しんでる。
眉根を寄せたヒトシくんは、もう一度大きなため息をつくと、冷ややかな視線を投げかけてきた。
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