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あたし、ジンにもものすごくひどいこと、したんだよ?
震える声を隠すこともできずに、あたしは彼の顔を見た。
「だから、それは……あの晩もわざわざ確認したろ。マナと俺は、50:50だって」
ジンは、憂いのないすっきりした顔をして、にっこりと微笑んだ。
「だから、なしにしよう。お互いにあの夜のあれこれを責めたり、今さらどうこう言うのは」
「そんなの、できるわけ……」
「うん。なかったことにはできないけど……。残念ながら、色々、はっきり覚えてるし。けど、口に出せない罪の意識のひとつやふたつ、あってもいいんじゃないって」
そう言って、彼は帰っていった。
ジンがいなくなったのを見送ったあと、あたしは返してもらった携帯を見た。
そこには、マドカの連絡先がちゃんとあった。
……それと、おせっかいにもヒデオのも。
バカじゃないの。
初めから選択肢になければ考えなくても済むから、あたしはできる限りまっさらにしようって、そう思ったのに。
携帯にヒデオのアドレスなんてあったら、またあたし、迷うじゃない。
会いたいけど、どうしよう──って。
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