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ヒトシくんの指の間にある煙草から、ゆらゆら煙が立ち上る。
「だけど、今の俺の失望に比べたら、何でもないと思う……」
あ。
何か、泣きそうだ。
あたしがぎゅっと口唇を噛みしめると、ヒトシくんは浅く煙を吸った。
「……あなたは結局誰でもいいのかなって、そう思った俺の気持ち、判る?」
まだ残っている煙草を灰皿に押し付けながら、ヒトシくんは平坦な声で続ける。
「ここ半年の
マナミさんとのやり取りはね。
あなたとだからしてきたことだし、
あなたとだからできたことだし、
楽しかったんだって、
俺はそう思ってる。
けど、マナミさんは違ったのかな」
「違……っ」
「何が違うの? 俺の言ったセリフを一言一句違えず言ってさえいれば、他の男でも喜んでたんじゃない?」
口唇を噛みしめたまま、ぶんぶんとかぶりを振った。
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