213人が本棚に入れています
本棚に追加
余計なことを言った、と後悔した。
だけど、涙が出るほど悔しかったんだもん。
『誰とでもできること』とか、『その最初を水沢に奪われた』とか。
判ってるくせに、どうしてわざわざ、ヒデオの口からそんなこと聞かされなくちゃいけないの。
そんなの、自分だって同じなくせに。
それも、判ってるくせに。
──ああ、そっか。
あたしがヒデオに抱かれてるとき、今死にたい、とか考えてしまうのはこのせいだ。
本当は、この腕の中だけで存在していたい。
狭い世界の中で、ヒデオだけを見て、ずっと。
だけど現実はちっともそうじゃなくて、あたしはすぐに揺らぐ。
自分でも、腹が立つくらい。
だから、ヒデオの腕に抱かれて、その幸せの中で、朽ち果ててしまえたら、なんて思うんだ。
まったく優しくない現実を、こうしている2人の間にしばしばちらつかせるヒデオに苛立って、あたしは逆らってしまうんだ。
.
最初のコメントを投稿しよう!