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「……なんか、ひどいよ、ヒデオ。あたしまだ何も答えてないのに、エッチしてくるし……」
「……聞く必要、なかったし」
「え?」
「お前の顔見てたら、答えくらい判るし、俺の言うことに喜んだことくらい……判るんだよ」
また、人のせいにする。
腑に落ちないけど、でも。
見透かされっぱなしの当のあたしは、そっか、と納得できてしまう。
「けど……」
「あー、お前、うるさい。ビビってんのは判るけど、時間稼ぎしても無駄だからな」
ため息をつきながらヒデオはあたしの左手を取ると、意味なくさすりながらキスしてきた。
「え?」
指に違和感があって、ヒデオが離れる。
あたしはふと自分の左手に視線を落とした。
「──……っ!」
息が、止まるかと思った。
水の流れのようにやわらかく波打つプラチナのラインに、小さなダイヤが桜の花びらの形になるよう模られた──指輪。
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