387人が本棚に入れています
本棚に追加
気が強いくせに、肝心なところで脆くて、弱くて。
かっこいいのに可愛いひと、と思ってしまった。
ヒデオのお父さんに色んなフォローをしてもらっているうちに、いずれはあたし達を結婚させてしまおう、という周りの意図が透けて見えていた。
先のことは判らないけど、ヒデオに好意を持っているあたしにしてみれば、こんな嬉しいお膳立てはない。
従うあたしに反してヒデオは、全部を決め付けてくる父親がいやだ、と言って、マンションを出たらしかった。
ひとり暮らしを始めたその部屋に近い将来、入れてもらえるものだと思っていた。
ヒデオが色んな人とよからぬことをしているのは気付いてたけど、彼がまだ翠川愛美への未練に胸を焦がしていることを知ってたから、どれも本気じゃないことは判ってた。
時間が経てばあたしとのことを考えてくれるんじゃないかって、そう思っていたんだ。
だからヒデオが、翠川愛美とヨリを戻すなんて──想像もしてなかった。
そのとき初めて、彼女のことが憎くなった。
ヒデオにリュータローのことを教えたのは、軽いイタズラ心からしてしまったことだけど。
.
最初のコメントを投稿しよう!