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仕事中でも携帯を気にするヒデオの横顔だけで、本当に本気なんだってことを思い知らされるだけだった。
ヒデオのことを、男として育ててるつもりでいた。
そのとたん、あっさり持っていくなんて……サイアクな女。
だったら、あたしも奪い返してやろうと、そう思った。
だけど、何度翠川愛美に裏切られても、ヒデオの心の中から彼女の存在が消えることはなかった。
忘れられるなら忘れてしまいたい、とあたしにいいようにされながら泣くヒデオの姿は、今思い出しても胸が痛むものだ。
翠川愛美とあたしを使い分けるずるさがあるくせに、心だけは彼女のところに残してくる彼に、いい加減腹が立った。
だってヒデオは後輩の男の子に彼女を取られても、また取り返してきた。
バカなんじゃないの、と思ったけど。
あたしの恋心も、もう限界で。
死にたい、と口に出してしまったことで引っ込みがつかなくなって、手首を切ってしまった。
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