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彼は呆然としている私の手から紙袋を受け取ると、その場で中身を引っ張り出した。
雪の結晶がプリントされた包装紙と、青いリボン。
四苦八苦しながら包んだそれは、決して綺麗とは言えない。
それを品定めするかのように見るから奪い返したくなった。
「ラッピングも自分でやったんだね。何で雪の結晶なの」
やれって言ったの、そちらですけど。
「…この間、それ系の本を読んでましたから。…だから何となく」
見ていたのを気付かれていたならもう隠してもしょうがない、と腹をくくり正直に言えば、彼は僅かに目を見開いた。
「…俺はそんな類の本を手にしていたのか」
「え?」
「何でもないよ」
何でもない、と言いながら彼の口元が綻む。
「じゃあ、俺の事を考えながら選んだんだ」
「…そうなりますね」
ちゃんと考えてラッピングしろって言ったのもそちらですけど。
意味も分からず眉をひそめていると、彼は満足そうに頷いてから私を見た。
「このラッピングに免じて言葉はいいよ」
「え?」
「返事はホワイトデーに。三月十四日、またここで」
「え!?いや、ちょっと!返事って何!」
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