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「来月、私がフられる可能性もあるんですか?」
「さあ」
「さあ、って。…自分から仕掛けたくせに」
「それでいいよ」
「え?」
「一ヶ月間、ずっと悩んだり考えたりしててよ。そうすれば日下部さんの中に俺がもっと根付くから」
「……」
…それはもう四宮さんからの告白って事なんじゃないの?
不本意ながらも熱の溜まっていく顔を隠すように背ければ、再びガラス窓に映る二人が目に入った。
知人にしては不自然な程に開く距離。
慣れないバランス。
…もしかしたらこのシルエットが、とても愛しいものへと変わるかもしれない。
彼の言うとおり、一ヶ月後には私の中を占める彼の割合は増えているんだろう。
彼の掌で転がされることが悔しいような嬉しいような。
薄暗くなってきた商店街に溶けていく、紙袋を持った四宮さんの背中を目で追った。
雪の結晶。
唯一無二の、六花のかたち。
恋の始まりも、二人の在り方も。
きっと六花のように同じものなんてこの世に一つもないんだろう。
見えなくなった四宮さんを想うだけで、彼の思惑通り、胸が甘く疼いた。
これがきっと、私達らしい始まりのかたち。
仄かな恋心は確かな予感へと変わった。
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