萌芽、その後に

7/7
前へ
/8ページ
次へ
  「来月、私がフられる可能性もあるんですか?」 「さあ」 「さあ、って。…自分から仕掛けたくせに」 「それでいいよ」 「え?」 「一ヶ月間、ずっと悩んだり考えたりしててよ。そうすれば日下部さんの中に俺がもっと根付くから」 「……」 …それはもう四宮さんからの告白って事なんじゃないの? 不本意ながらも熱の溜まっていく顔を隠すように背ければ、再びガラス窓に映る二人が目に入った。 知人にしては不自然な程に開く距離。 慣れないバランス。 …もしかしたらこのシルエットが、とても愛しいものへと変わるかもしれない。 彼の言うとおり、一ヶ月後には私の中を占める彼の割合は増えているんだろう。 彼の掌で転がされることが悔しいような嬉しいような。 薄暗くなってきた商店街に溶けていく、紙袋を持った四宮さんの背中を目で追った。 雪の結晶。 唯一無二の、六花のかたち。 恋の始まりも、二人の在り方も。 きっと六花のように同じものなんてこの世に一つもないんだろう。 見えなくなった四宮さんを想うだけで、彼の思惑通り、胸が甘く疼いた。 これがきっと、私達らしい始まりのかたち。 仄かな恋心は確かな予感へと変わった。 
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

23人が本棚に入れています
本棚に追加