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「今年も行くのですか?」
そう、聖歌隊の衣装を脱ぐ彼女に尋ねる。
「ええ、シスター。主人が待っていますから」
朱色のガウンを、丁寧に畳みながら彼女は溌剌とした声を響かせた。
教会の大時計にさっと目をやり、
慌てた様子で、椅子の上に置かれたベージュのマフラーを無造作に巻きつけたあと、私へとほんの少し上気した笑顔をみせた。
「そうですか。
今夜は、雪深くなるようです。お気をつけて」
「ええ、」
「メリークリスマス」
「メリークリスマス。シスター」
赤い傘を彼女に手渡すと、
深々とお辞儀をし、雪積もる石畳の上を歩き出した。
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