ルピアさん×桜海 とあ

8/10
前へ
/10ページ
次へ
☆☆☆ 「今年も行くのですか?」 そう、聖歌隊の衣装を脱ぐ彼女に尋ねる。 「ええ、シスター。主人が待っていますから」 朱色のガウンを、丁寧に畳みながら彼女は溌剌とした声を響かせた。 教会の大時計にさっと目をやり、 慌てた様子で、椅子の上に置かれたベージュのマフラーを無造作に巻きつけたあと、私へとほんの少し上気した笑顔をみせた。 「そうですか。 今夜は、雪深くなるようです。お気をつけて」 「ええ、」 「メリークリスマス」 「メリークリスマス。シスター」 赤い傘を彼女に手渡すと、 深々とお辞儀をし、雪積もる石畳の上を歩き出した。 .
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

17人が本棚に入れています
本棚に追加