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そんな事まで関与する気のない茜は、まるで彼に協力するつもりはない。
誠一は誠一で金森に捕まりたくない事情がある。それは一週間前に中学の時の友人との付き合いで、某アイドルのコンサートに行く為に学校をズル休みした事がバレて説教を受けている。
これがひと月やふた月前の出来事であればまだマシだが、たった一週間前の話だ。先方にしてみれば舌の根も乾かぬうちにと言った所だろう、今日の事と併せてズル休みの件まで蒸し返して説教されるのは目に見えている。
それだけは避けたいと、誠一は考えを巡らせた結果あるアイディアが浮かんだ。 別に大したアイディアではない、この場を何とかして逃げ帰り、届け出を忘れて帰ってしまったとしらばっくれるというだけのモノ。クラスメイトの瑞穂が見たのは幻であり気のせいだとシラを切る事。無論茜には見て見ぬふりをしてもらう。
「茜!頼みがある」
「あんたの考えている事なんか分かっているわよ。あたしは何も見なかった、って事にしろってんでしょ?…でも、そんな嘘が通用すると思う?」
「なんとか逃げ出すから、頼む!」
そんな事をすれば、余計に説教されるだけなのにという、至極真当な判断も出来ない程焦ってる様を面白がりだした茜は、あえて彼のプランにのっかる事にした。
ただし。
「捕まっても、あたしは無関係を通させてもらうから」
という条件。
敵には回らないが味方もしない、よくよく考えたら何も協力しないと言っているに等しいのだが、そんな事すら気付きもしないで、彼は一言。
「助かる!」
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