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PTAやマスコミからの突き上げで暴力問題が取り沙汰される昨今、そんな事などどこ吹く風の古い生徒指導の典型とも呼べるマッチョで熱血で恐面の金森は、見かけからは想像出来ない素早い動きで誠一を捕まえると、まるで猫の子を拾い上げるように彼の首根っ子を掴んで、目の笑っていない笑顔を誠一の眼前へと近付け てきた。
「結城ぃ、先生の事を呼び捨てにするとは、どういう了見だ、ん?」
「あ、いや、その、何の御用でしょうか金森先生」
もはやこうなれば大人しく言う事を聞くしかない。が、聞いたとしても簡単に開放される訳でもないのだが。
「俺はお前の事を、今までは大人しくていい生徒だと思っていたんだがなぁ」
「そ、そんな、買い被りですよ」
「ああそうだ、俺はお前の事を買い被っていた。この前の件といい、今日の件といい…まさかよりによって俺の授業をすっぽかすとはなぁ…」
「いや、これには深い理由があって…」
「ほほぅ?」
どう考えても口から出任せを言っているのは明白なのだが、彼がどういう言い訳をするつもりなのかに興味を示した金森は、ポケットの中に忍ばせていた物を取り出して誠一に見せる。
それは鍵だ。
ネームホルダーには『第一生徒指導室』と書かれた紙が、セロハンテープで貼り付けられていて、それが何を意味しているのかを誠一に教えている。
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