2 彷徨う

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「はあ?金縛りぃ?」  駅前広場の片隅、小さな公園のベンチに座りながら、誠一におごらせた某M店のハンバーガーを頬張っていた茜は、彼が最近抱えているという悩みを聞かされて素っ頓狂な声を上げた。  ハンバーガーを食べる手を止めて、怪訝な表情を隠そうともせずに誠一の顔をマジマジと眺めている彼女の様子は、まるで珍獣でも眺めているかのように見える。  が、それも数秒の間だけで、即座に興味をなくして顔を背け、再びハンバーガーを食べ始め、駅前を行き交う人の足を所在なさげに眺めていた。  一方の誠一は、そういう反応をするだろうと予想して悩みを打ち明けたのだが、実際にそれをされると無償に腹が立ってくる。  今の彼にとっては切実な問題なので、こうあっさりと無視されて気分がいい訳がない。  とは言うものの、彼のその悩みを打ち明けられた茜の方からすれば『最近毎晩幽霊が現われて、金縛りに遭ってまともに寝れない』などと言われても、ふざけて言っているとしか思えないのも仕方のない事ではある。 「お前、俺の事を馬鹿だと思っているだろ」 「違うの?それ以外の何者でもないと思うんだけど」  彼の話を真剣に聞くつもりのない茜は、取り繕う気配もなしにはっきり『そうだ』と決め付けてしまっている。 「はっきりと言っておくが、俺は嘘などこれっぽっちも吐いていない。本当に毎晩毎晩女の幽霊が現われて悲しそうな目で俺の事を見ているんだ、その間俺は金縛りになって体が動かないんだ」 「あぁ、はいはい、それはさぞかし大変でしょうね」
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