2 彷徨う

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 日頃の行ないが悪いせいだろう、普段からふざけた事ばかりを言っている誠一は、完全に信用されていないようだ。 「本当なんだってば、真剣に聞いてくれよ」 「分かった分かった。もしあんたがその幽霊に取り殺されたら、線香の一本でもあげてあげるわよ」 「嘘だ!通夜はおろか告別式にも参列する気がないくせにぃ!」  信じてくれないという苛立ちが、話が脱線していると知りつつも彼女の言葉に難癖をつけさせる。 「…誠一、あんたってあたしの事をそんな女だと思ってたの?」  さすがに冷酷女扱いをされて、彼女は少し傷付いたようだ。今まで彼の話を流していたが猛然と言い返してくる。 「確かに最近誠一の様子が変だって気付いていたわよ、気付いていながら何も訊こうともしなかったわよ。で もそれは訊かないほうがいいのかなって思ってただけで、それだけで冷酷女扱いされる筋合いはないわ!」  もしかすると、彼女は誠一から悩みを打ち明けてほしかったのかもしれない。普段の誠一なら違和感を覚えながらも、そんな彼女の気持ちを察知できたかもしれないが、正直今の彼にはそれだけの心の余裕がない、オロオロしながらどう言い返そうかと迷っている。  なんとなく茜も誠一が心に余裕がない事に気付いたが、言い出したものは仕方がないと一気に捲し立ててい く。 「大体何?毎晩幽霊が現われるせいで寝不足になって困っている?数十年前に某大御所お笑い芸人が使った遅刻の言い訳みたいな事を言って…あんた馬鹿なんじゃないの?」
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