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想定内の、予想通りの返答とはいえ、乙女心がそう言わずにはいられない。
とは言うものの、逆にこれがもし「萌える~」などと興奮し始めていたら、それはそれで彼女は狼狽えていたことだろう。
「…なんか違うんだよな~、もっとこう…可憐で抱き締めてあげたくなるような女の子の方が…」
と、少し傷付いている彼女の事も、本来の話の流れも無視して、誠一はその妄想の中に彼女とは違う別の相手を登場させる事を思い付いた。
「美由紀ちゃん…そう、彼女みたいな女の子がいい!」
「ミユキちゃん?」
彼の口からは聞き慣れない名前が出てきて、誰の事だろうかと茜は疑問符をうかべたが、とある噂を思い出してそれが誰なのかの見当を付け、誠一に確認してみる。
「…今誠一が言ったミユキって確か、一年で陸上部に所属している相原美由紀って女の子の事?」
「お?…なんだ、彼女の事知っているのか?」
「部活の後輩に、彼女と中学から同じだったって娘がいてね、前にその娘の話を聞いた事があるのよ」
「ふ~ん」
と、あまりその話に興味を示さなかった誠一は、特に茜の言葉に食い付く様子もなく、頭の中をフル稼動させて相原美由紀の巫女姿を妄想し始めた。
バックの背景はボンヤリ淡いピンク色、シャボン玉のようなぼやけた球体が幾つも空中をプカプカと漂い、種類のよく解からない奇麗な花が足下を覆い尽くす。
そしてその花が引き立て役かと思われるような、可憐で可愛らしい美由紀ちゃん(飽く迄も、彼がそう思っているだけ)が巫女姿でこちらを振り向き、静かに歩み寄ってきて 『はい』と甘えるような口調で呼び掛けながら破魔矢を手渡してくる。
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