2 彷徨う

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「いい!すっごくいい!萌えるぅ!」  自分の妄想に興奮している誠一の姿を、茜は冷めた目で呆れて見ている。その姿は誰が見ても、馬鹿以外の何者でもなく映っているだろう。 「馬鹿みたい」  彼女はそう呟いて、食べ終わったハンバーガーの包み紙を丸めると、妄想の中で絶賛興奮中の誠一の顔面目掛けて投げつけた。 「…なんだよ」  我に返って足下に転がる今の包み紙を拾い上げている誠一に、彼女はセットのコーラーを飲みながら話しかける。 「忠告しておくわ」  彼個人としてはもう少しシミュレーションしていたかったようだが、意味ありげな言葉に憮然としながらも話しかけてきた彼女の顔を見る。 「なんだよ、忠告って…」 「あのさ、聞いた話によるとその娘、彼氏がいなくってフリーらしいけど…」 「何ぃ?本当か!」  茜はその先を続けようとしたのだが、『フリー』という言葉に異状とも呼べるほどの過剰反応を示した誠一は、その後の茜の言いたい言葉など耳に入らないようで、話を進めようとする彼女を無視して、両肩を鷲掴みにして前後に揺らしながら執拗に再確認をしてくる。  突然の行動に驚いた茜は、数秒されるがままに頭を上下に激しく振らされていた。 「本当か!今の言葉は本当なのか?」 「ちょ…やめ…」 「さあ言え!本当なのか?白状しろぉ!」 「痛いってば、放してよ!」
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