2 彷徨う

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 揺らされるがままだった彼女も、頭がヒートアップしている誠一の腕を、痛いとばかりに強引に振り払い、肩にかけていた鞄を手に持ち直して渾身の力を込めて彼の顔面を強打する。  結構な勢いで直撃した鞄の中に何か堅い物でも入っていたのか、それを受けた誠一は数秒顔面を押さえてしゃがみ込んで痛がって いた。 「痛ってぇな!何すんだよ」  痛みを堪えつつ文句を言うも、彼の方が分が悪い。 「それはこっちのセリフでしょ!」  当然の反論で一喝すると、彼女は足下に転がる空になってしまったコーラーの容器を手に取る。  普通なら倒しても簡単に容器の中身が零れないように蓋が付いているのだが、誠一のせいで地面に落とした衝撃で外れてしまってい て、中身のコーラーと、一緒に飛び出した氷の群とが地面の上を濡らしていた。 「もぅ、まだ半分も飲んでなかったのにぃ…もったい無いなぁ」  ブツブツ文句を言いながら、地面に転がる蓋も拾い上げて、先程拾い上げたコーラーの容器と一緒に近くのごみ箱へと捨てた。 「…いや、そんな事よりフリーってのは…」  性懲りもなく同じ質問を繰り返す誠一。  思わずイラっとして再び彼女は彼を一喝する。 「人の話を聞きなさいって言ってるでしょ!」  彼女の中では伝えたいポイントはそこではないから、こういう発言になるのだが、彼からすれば突然怒られた気分になる。 「いや、言ってねえし」などと誠一は言いたい所だが、油に火を注ぐような真似だと思い、その言葉を飲み込んだ。 「悪かった、悪かった…んで、何?」 「ったくもぅ、ちゃんと話は最後まで聞いてよね」 「分かった分かった」 「……」
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