2 彷徨う

9/14
前へ
/164ページ
次へ
「危ないって…どう危ないんだ?」 「さあ?あたしもそこまでは知らないわよ」  と言いつつも、彼女は相原美由紀の何が危ないのかを知っている。  先程述べたように、せいぜい痛い目に遭えばいいと思っての事だ。  そこまで誠一は気付いていない様子だが、意味が解らないながらも「危ない」というワードに、流石に少しは考え込まざるを得なくなった。  がしかし、多感な思春期の少年の熱いリビドーはちょっとやそっとじゃ止められない、恋は盲目とはよく言ったもので、瞬時に元のポジティブシンキングへと戻ってしまった。 「青春は今この時しかない!だが、彼女のテスト勉強の邪魔はしたくない。よってテスト明けにでも告白するぞ、当たって砕けろだ!」 「派手に砕け散ると思う」 「…さぁて、それはどうかな?」 「なんて言ったらいいのかな…彼女はとても強くて異質な愛によって守られてるんだって」 「??…よく分からん」 「分かんなきゃ分かんないでいいわよ、馬鹿」  そう言い残して彼女は、もう塾に行く時間だからとこの場を立ち去る。  が、彼女が立ち去ろうとした時、誠一はとある事を思い出して、彼女の鞄にしがみついて引き止める。 「ちょ、ちょっと待ってくれ、俺の話しを真剣に聞いてくれよ!今夜もまた金縛りに遭うのかと思うと、もぅ怖くて怖くて眠れないんだよ~」 またかと言った感じの溜め息を吐くと、彼女は冷めた表情で誠一の顔を見てはっきりと言い放つ。 「あのね、あたしはこれから塾に行かなくちゃならないの、あんたの面白くない冗談を聞いているほど暇じゃないのよ」 「そんな冷たい事言うなよ~」 「…男のくせに女々しい事を…」 「女々しいなんて単語を使うと、男尊女卑の発言だって言われて怒られるぞぉ」 「どういう引き止め方よ、それは」
/164ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加