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「誰も、誰も俺の言う事を信じてくれなかったんだよぉ、親に言ったら相手にしてくれなかったし、金森には馬鹿扱いされて説教までしてくるし~」
「はあ?あの熱血馬鹿にも話したの?」
誠一が生徒指導室に連れていかれるのを彼女は目撃している、だから今日のサボりの原因でもある寝不足の理由を問われて、仕方なしに幽霊の事を喋ったんだろうと、茜は即座にその光景を想像した。
が、それはそれとして、今は抱き着いてくる誠一をどうにかしないといけない。このまま誰か知人に見られてTwitterにツィートされて変な噂が立ってしまう恐れもあるし、塾に行く時間が迫りつつあった。
「ちょっと誠一、あんたの話しを信じるのはいいとして、あたしに何か出来ると思っているの?」
「…へ?」
言われて誠一もハッと気付く、冷静に考えて見れば確かにそうだ、幽霊相手に彼女が何か出来るかと言うと、出来るわけがない。
「あたしは小説や映画に出てくるような霊感少女なんかじゃないわよ、なんとかしてくれって頼まれても、あたし自身は何も出来ないわよ」
「…そう…か…」
問題の根本は何も解決されない事に気付いた誠一は、抱き着いていた彼女を開放したかと思うと、フラフラっとベンチに向かって歩き出し、そのままドカっと座り込んで俯いたまま、動かなくなってしまった。
「そうだよな…信じてもらったって、何も解決しない事にはどうにもならないよな…」
さっきまでの元気はどこへやら、意気消沈して完全に落ち込んでしまった。
この隙に逃げ出すつもりでいた茜もさすがに可哀想に思えてきて、微かに思い当たる朧気な会話をチラッと思い出し、その記憶を必死に甦らせ始めた。
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