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努力の甲斐あって、彼女が思い出した事は…
「ちらっとだけ聞いた話なんだけど」
「…ん?」
「…直接会った事がないからどうとも言えない話しなんだけど、先輩の友人の知人にその手の話しに詳しい人がいるって聞いた事があるから、よかったら先輩に話してその人を紹介してもらえるか、きいてみようか?」
ほとんど死人かと思えるほどに暗く落ち込んでいた誠一は、その言葉に過敏に反応し、また例の椎茸の断面図のような目を茜に向ける。
家が隣同士の幼馴染み、小さい頃からずっと見ていて見飽きたとさえ思っていたはずの茜の顔が、今の誠一には女神かと思えるほどに神々しく映って見える。
「…ほ、本当か?茜」
嫌な予感を感じた茜は、にじり寄ろうとする誠一から後退りして間合いをとる。
「最初に断っておくけど、あたしの知人じゃないからすぐには会う事は出来ないわよ。先輩やその友人、肝心のその知人にだって都合はあるだろうし」
「え~っ!そんなぁ~」
「え~じゃないわよ、あたしだってこれから塾に行かなくっちゃいけないんだからね、あんたと違って」
彼女の言うように、誠一は塾には通っていない。通っていないのに、下手に通っている人間よりも成績は上だ。ごく普通の学生とは述べているが、以外にも彼は頭のいい学生なのかもしれない。しかし、日本史や世界史に関しては中学生レベル以下の学力しかないのが最大の弱点だ。
それはともかくとして、塾の時間が推してきている茜は、下手に抱きつかれまいと彼の期待値を更に下げにかかる。
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