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「それと、今の話しは又聞きの話しだからどこまで保証できる情報かは分かんないんで、過度の期待はしないでよね」
「うそぉ~ん」
「じゃ、そういう事だから」
そう言って彼女は、塾にも行かずに幽霊の出る自分の家に帰るしかない誠一をその場に残して立ち去ろうとする。
しかしと言うか当然と言うか、『じゃ』と言われて『そうですね』と簡単に返事をする気にはなれない、せめて茜だけでも今すぐに連絡してくれと頼もうとすると、それを予想していたかのように彼女は彼が何かを言う前に言葉で抑える。
「あんたね、誰かさんの巫女姿を想像して興奮するような、いやらしい妄想をするだけの余裕がありながら、今更二三日も待てないほど精神的に追い詰められているなんて言わせないわよ」
「いや…それはその…ほれ、あれだよあれ」
「あれって何?」
「死を直面にすると、子孫を残そうとする本能が働いて性的興奮をするっていう…」
歴史は弱いくせに無駄な知識だけは豊富だ。が、当然そんな思春期の少年の青い主張は…
「却下」
の一言で簡単に切り捨てられてしまった。
結局は今夜も寝不足に悩まされる事となった誠一は、彼を置いて歩き去っていく彼女の背中を見送くるしかない。
とは言っても、見えなくなるまで見送る意味もない、適当な所で切り上げて帰路に就こうと考える。が…
「…あんまり帰りたくないな…」
部屋には幽霊が待っている、帰りたくないが帰らないわけにはいかない。
深い溜息をついてから鞄を取ろうと振り返る。と、ふと今まで自分が座っていたベンチを見てみると、彼女が食べ忘れたフライドポテトがチョコンと置かれていた。
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