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が、彼は簡単には諦められず、スマホを取り出してディスプレイの時刻表示を見るが、当然の如く腕時計と同じ時間を表示していた。
「次は時報でも聞いてみる?」
彼の様子を見ていた茜は、無意味な事をしていると思いながら、更に無意味な事を提案するが、さすがに彼も現実を受け入れたらしく、スマホを制服の内ポケットへと押し込んで肩をガックリと落とす。
意気消沈して落ち込んでいる誠一に対して止めを差すかのように、彼女は他人事のように彼に迫ってきている現実を彼に告げた。
「そうそう、金森先生があんたの事を探していたわよ」
「げぇ!金森が?」
ちなみに金森先生とは、この学校で勤務している教師の一人で、誠一が最も苦手とする科目の日本史の担当教師だ。
と、同時に生徒の風紀を取り締まる生徒指導でもある。
そして、つい先程寝過ごしてすっぽかしたのが、その日本史の授業であった。
「最初にあんたがここで寝ているのを見付けたのは瑞穂だけど、さっき金森先生に教えに走って行ったから、ここに来るのは時間の問題ね」
彼女の言う瑞穂という人物は、茜のクラスメイトの友人で、同クラスの学級委員長。当然クラスが同じ誠一も知っている。
が、今の誠一にはどうでもいい話し。…いや、真面目な優等生の委員長に見付かったから確実に金森へと情報が伝達されたのだから、今の現状を鑑みるとどうでもいいでは済まされない。
とは言うものの、彼一人がどうこう出来る事でもない。
「ど、どうしよう」
「どうしようって言われてもねぇ…」
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