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ある晴れた日、グラーズ樹海の中にある一本の木の上で、緑色の髪の少女が果物を採っている。妖精の少女ルルだ。
「さてと、これくらいでいいかな」
枝に掛けたリュックには果物が満載されている。それを背負い、木から飛び降りた。
普通なら大怪我をしてもおかしくない高さである。しかし、ルルは信じられない程ゆっくりと着地した。
それもその筈。ルルの背中には、純白の翼が生じている。この翼を使い、自在に飛べるのだ。
ルルが翼を消した時、黒髪の青年が駆けてきた。背中に仕留めたばかりの猪を背負っている。
ルルの兄、アルだ。
「ルル、怪我はないか?」
「うん。果物沢山採れたよ」
「偉いぞ。さ、暗くなる前に帰ろう」
二人はいつも通りに手を繋いで帰り始める。その途中、ルルが急に歩みを止めた。表情を険しくして。
「ルル?どうし……んっ!」
「お兄ちゃん、気付いた?」
「ああ、かなりいるな。村が危ない!」
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