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アルの読みは正しかった。グラーズ村はウリズン帝国軍の攻撃を受けていた。率いているのは紫の髪の騎士。
村人は成す術なく一カ所に集められていた。
周囲は百人程の兵士に囲まれている。
アルとルルが村に着いたのはそんな時だった。とは言っても飛び出すわけにもいかず、木の影に隠れているのだが。
(クッ、ウリズン帝国か)
(どうしよう、あれじゃ助けられない)
「アル、ルル」
後ろから声を掛けられ、二人は反射的に振り向いた。そこには
「父さん」
「パパ」
「二人共、直ぐに村から離れなさい。ギルドに助けを求めるんだ。今なら奴らは気付いていない」
「それしかないか」
「お兄ちゃん?」
それは苦渋の決断。しかし、村に留まって抵抗しても無意味。ならば可能性がある方に賭けるしかない。
「私が時間を稼ぐ。決して振り向くな」
「パパ…」
ルルの目から涙が落ちる。そして、二人は駆け出した。
遠くで父の悲鳴が聞こえる。
二人は決して振り向かず森を抜け出した。
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