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「いや、そうじゃない。やっぱり咲良は最高だな、と思ってただけだ」
「俺が悪かったから黙ってろ」
極め付きの渋面でそう吐き捨て、俺はとりあえず、最近休みがちになっていた秀明に連絡をとろうと携帯を取り出す。
と。
「あの、」
振り向いた俺たち二人を交互に見ていたのは、役者の1年女子だった。
高校時代から演劇に親しんでいたらしく、大人しそうな見た目には見合わぬほどのコメディエンヌだったりする。
彼女は、恐らくは怪訝そうな顔をしているだろう俺の側に視線を留める。
そして、躊躇いにかふっくらとした頬を僅かに震わせてから、
「あたし、スガ役にぴったりな人、知ってるんですけど」
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