五百年と五十年

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「あったあった、この紙だ。今からこの紙に映像が流れる。なんでさっきは書いたって言ったのに映像なのかは………まあ、気にしたら負けだよ。」 ていうか、あの時呟いた「なんなんだよ、俺は」ってそう言う意味で言ったんじゃないんだけどな。 まあいい、今は映像に集中しよう。 俺がなんなのかを知るために必要、と神は言っていた。恐らく俺の過去なのだろうけど、皆目検討がつかない。 「お、そろそろだね。じゃ、あんまり思い出したくないと思うけど、しっかり見るんだよ。」 「あんまり思い出したくない……?おい、それってどういう……」 ことだ、そう言いかけた口は、流れ出した映像によって閉じることになる。 『あ、あ……ああ゛ぁあ!!!父さん!!母さん!!』 『いや……いや…いや!いやぁあぁああ゛ああぁあ゛ああ゛ぁ゛あ゛ぁああああ!!!!!!』 火に包まれた車内、中学生くらいの男の子と女の子が叫んでいる。2人の視線の先には中年の男性と、見た目は二十代の女性。 流れた映像は、俺の記憶と一致した。忘れたくても忘れられない記憶。忘れてはいけない記憶。 「………映像を止めろ。」 「ん?どうしてだい?」 何処か楽しそうに言う神。わざとらしい表情に苛立ちが募る。 「いいから!止めろって言ってんだろ!!」 「……どうやら意地悪がすぎたようだね。すまない。」 神は映像を止めた。それと同時に噴き出る大量の汗。目眩に襲われ、息も切れてくる。 「……ぜっ………はっ……てめぇ、なんでこんなもん見せた…?」 「まあまあ、そう怒らずに。落ち着いて落ち着いて。」 「……落ち着いていられると思ってんのかよ。」 「それもそうだね。ま、とりあえず何故こんなものを見せたのか、という質問に答えることにしよう。」 神は紙芝居をしまい、こちらを向いた。そして口を開く。 「その質問に答える前に、私が作った世界の大前提を話しておこう。」 「……は?」 「世界は複数存在する。私が作った数だけね。で、その複数の世界には共通する物があるんだ。」 「おいまて、なにを……」 「共通する物は二つ。一つは命、一つは死。」 神は俺を無視し、淡々と話続ける。 ………今は何を言っても無駄なようだ、黙って聞いておくことにするか。
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