五百年と五十年

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「じゃあ最ご「そろそろ辞めてもらってもいいかな?と言ってもまだ二回しか質問されてないけどね。」 じゃあ最後に、その言葉は神の言葉によって遮られた。 神は続ける。 「君だって薄々は気付いているんだろう?何故、私が君にあの映像を見せたのか。何故、その理由を話す前にこんな事を説明したのか。」 「…………………………」 否定も肯定もしない。自分で考えておいて、正直、信じられないようなことだからだ。 だが、信じられないようなことは真実だと言うことが、告げられる。その大前提を作った神によって。 「どうやら、否定も肯定もしたくない、信じられない、と言ったところだね。でも、あったじゃないか、君の好きな漫画にも【「ありえない」なんて事はありえない】って台詞がさ。」 「……………………」 神は続ける。 「あの台詞には私も同意だね。そこに在る、ということはあり得てるのだから、ありえないという言葉は成立しない。」 まだ、続く。 「ま、君が否定も肯定もしたくない、信じられない。と言うのなら私が肯定してあげよう。蒼壱君、君はね。」 神は、続ける。 「あの事故で、君の両親の命を奪った事故で、死んでいたはず。いや、死ななければいけなかった、なのにどういうわけか生き延びた。そんな存在なんだよ。」 がーん、そんな音が頭の中に響く。頭部の皮膚の下にあるものを、無理矢理引き摺り出されて、直接金槌で叩かれたような、そんな音。 随分まぬけな音だ。 神は続ける。 「それを証拠に、今この空間にいる君と、何処かの世界の君、この二人以外の君は死んでいる。あの事故が起こった、全く同じ月日にね。」 神は続け………………… …………続……………け…… ………………………………は? 「まて、それって、どういう、こと、だ。」 上手く舌が回らない。妙なところで途切れ途切れになる。 「だから、全世界の君はほぼ死んでいるんだよ。今この空間にいる君と、何処かの世界にいる君以外は。」 「……………俺、以外にも、生き延び、た、俺がいる、のか?」 「その通り。もっとも、こんな事はありえないはずなんだけどね。でも、「ありえない」なんて事はありえない。どうしようもない真実なんだよ、これは。」
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